創作性あふれる「山猫軒」


 自給自足をめざしていた建主・南達雄さんが企画し、自らが木の伐採をはじめ 、刻みも含めた全ての工程に参加した、様々な作家とのコラボレーションを促して生み出された多目的住居。
 下の写真は竣工当時(平成元年)のものですが、完成後も建物は建築の枠を超えて、作家たちの創作活動の場として独創的な空間に進化してきました。
 現在はギャラリー喫茶として、作家作品の展示や時にはコンサート会場に供される人気のスポットになっています。

 なお、木部が濃茶に見えていますが、古材ではありません。新材に着色しています。

 はじめは少しのお手伝いのつもりで始まった計画でしたが、結果として主設計と棟梁としてかかわることとなり、私にとっての建築の処女作となりました。その後の歩みの原点となった思い出深い作品です。

 様々な物語を生んだ「建設」は、(故)南千代さん著『夢見るエゴイストたち』(2003年邑心文庫)他に詳しく語られています。また、建築専門誌『月刊・住宅建築』にも掲載されました。合わせてご参照ください。


竣工写真


工程

 「空師」という職業をご存知の方は少ないでしょう。屋敷林に立つ欅などの木が高く育って、切り倒すには家屋や電線があって危険な場合に、「空師」が上って高く伸びすぎた幹や枝を切り落としてから、伐採するのです。 そうした数少ない「空師」のひとり小澤章三さんが地元の越生町龍ケ谷におられ、カメラマンの南さんは仕事を手伝いながら、その姿を写真に撮り続けていました。その小澤さんに構造材の多くを伐採していただくことになりました。

 


空師の技

「空師の技 伐木業・小澤章三の記録」 の一部をお借りして掲載させていただきました。

写真/南達雄、文/南千代

 

写真をクリックすると拡大されて、その下の方に文章があります。