樹のいのちに耳を澄まし、人と木を結ぶ

 私が師事した三宅島の宮下英雄棟梁の実家は若きころの棟梁が建てた家ですが、漂流して流れ着いた難破船のマストが使われています。島ではこうした漂着物(材)はしきたりとして競りにかけられたそうです。

 流れ着いたマストを見て、これで材料のメドがたったと安堵したと言います。

 

 どの地方の民家も、その地の自然・社会環境に沿って造られています。人が主か、外的条件(材料など)が主かといえば、民家は外的条件が主と言えるでしょう。一方で数寄屋建築のように、施主と大工の意向を中心に据えた、人が主の建築もあります。

 現在の建築は当たり前のように、人が主となっていると思います。

 

 現代の価値観からは見捨てられた材に、光を与えられないか。「初めに樹がある」という建築のあり方もひとつの方法として見直したい。そんな想いの詰まった建物を紹介させていただきます。 



  蔵を移築し再生させた-N邸離れ 

      

自然の曲がりを生かした柱や梁の表情が豊かです。

 





材木すべてを建築主自らが集めた家-K邸

 

木曽桧の芳しい香りが満ちる



写真/岡本寛治
写真/岡本寛治

心柱と尺角柱がつくる空間 -A邸

 

四角いシンプルな間取りと構造に自然木が映える。

 



 樹の家 (都幾川木建自邸)

 

「かわいそうな木に屋根をかけてあげたい」という願いに応えて…

 



撮影/岡本寛治
撮影/岡本寛治

 幼年スポーツクラブ「山の家」

 

子供たちが登れる  枝付きの大黒柱と棟持ち柱