現在、建築は専門家の手によってつくられるのが常識となっています。しかし、自分の家の建設にあたって、どこかに自分の手の痕跡を残したいと思う人も少なくありません。様々な技術と要素の複合でできている今日の住宅は、素人だけの力でつくりあげるには困難が大きすぎるのは確かですが、個々のケースに応じたセルフビルド・ハーフビルド(何らかの形による建主の建設への参加)を設定することは可能です。お金はないが時間がある人、建設を通してなにかを実現したい人等、その動機や目的は様々でも、商品のように家を買うのとは違い、自然環境や素材と関わり、作るプロセスの中からしか生まれないもの、見えてこないものもあります。自然と人間、自力と他力、精神と肉体等の相互の関係を通してセルフビルドをすることで、建物が単なる箱ではなく建主自身を投影し、何かを生み出す母体となりうる建築になることを願っています。