知足、工夫しながら成長していくスモールハウス


 2011年に起こった東日本大震災、福島第一原発の事故により、生きる上での価値観や人生観が変わった人は多いと思います。
「方丈記」では、鴨長明が平安時代に生きたその人生の中でつむじ風、地震などの大災害を経験し60歳近くになって、一丈四方(10尺〔約3m〕角、約五畳)の、移動できるように土台で組んだ住居を造り、その閑寂なひと間の庵を自ら愛して知足の暮らしを始めます。
 鴨長明とまではいかなくとも、少なからず物質文明の限界、科学技術、経済発展の限界を感じ、生き方を見つめ直そうとする人が私たちの身近でも増えました。

 そんな時に以前からの知人のKさんから「小さな家に住まう」をコンセプトの中心とし「環境にやさしい・ハーフビルド・無理のない予算の家づくり」の依頼がありました。

 

Kさんの、家づくりのコンセプトは以下の通りです。
  ・家が命を終えるときになるべく多くの部分が土に還る素材を使う。
  ・家族4人が住む最低限の大きさ
   (小さな家に大きく住まう/少ないエネルギーでの生活を目指す。)
  ・間取りはシンプルにし、住まいながら少しずつ自分たちで作り加えていく。
  ・地元の技術者、材を使う(地域経済の循環)
  ・家族で出来ることはやる。

 

 広さは4間×4間の平屋をコアとし、お子様の成長など暮らし方の変化にともなって外側に増築しやすいように、開口部などを計画しています。また、4間×2間の広さの中二階の部屋を作れるように梁組を仕組み、すぐに階段をつけて床を貼れるようにしました。


竣工写真


工程

施主の当初のイメージはストローベイルハウスでした。しかし、現実化するには様々なクリヤーしなければならない問題が見えてきたため、実現可能な案として中古畳をリユースして壁断熱材として使うことになりました。

 


その後の展開

 住まいはじめて一年越えで、壁材として使った古畳表面にカビが発生しました。原因は確定したわけではありませんが、畳裏に貼られた防湿シートによって、室内の湿気が畳内部に留まり、それがカビの発生を促したと思われます。
 結局、健康上の問題から畳壁を取り外し、木の繊維断熱材充填の上石膏ボードとモイスを部屋によって使い分けて貼ることになりました。
 畳裏の防湿シートはガッチリと畳床に縫いつけられているため、剥がすのは容易ではありません。はからずもリユースの難しさを教えられた結果となりましたが、家づくりに対する思いは変わりません。 詳しくは施主様の記録 をご覧ください。

 

facebook 小さな家に住まう/Living small house

(2015.5月28日)「我が家を建てるときのモットーのひとつ、 『建材はなるべく土に還る素材を使う』でした...。ストローベイルの発想から「古畳」を室内の壁にそのままはめ込んでいる我が家です。意外にもにお客さんは「畳が壁」に気づかないくらい自然です。しかし、問題が・・・。」