古民家・軸組みの解体-チェアライブラリー

Mt.Fuji Wood Culture Societyの建物(チェアライブラリー)のために移築する古民家(築92年)は、1月18.19日の両日で無事、解体作業を終え、ときがわ町の作業場に運搬しました。


二階天井裏で見えなくなってしまうはずの梁組みですが、曲がりくねった松梁を巧みに組み合わせた技量には目を見張ります。

また、全解体工程を通して、手抜きのない精巧な仕口継手の数々は、本でしか見たことのなかったものもあり、施工中職人同士で歓声を上げること度々でした。

 

構造が現しになるまでの解体の作業、天井裏に積もった長年の埃や動物の糞、土壁の土埃にまみれながらも、先人の仕事に感動の声を上げる若い職人たちの瑞々しい感受性と熱いまなざし、互いに切磋琢磨し合う関わりは、これからの木の文化・Wood Cultureの未来を築いていくに違いないと感じました。

 

土葺きの瓦とその下の杉皮と木小舞、そして垂木を取り去った後の美しい軸組み
土葺きの瓦とその下の杉皮と木小舞、そして垂木を取り去った後の美しい軸組み

解体は建てた順番の逆をたどるので、最上部(棟木)から外していきます。危険な高所作業なのでチームワークが求められます。普段は見ることのできない姿がドローンによって映し出されます。

 

二階天井の上には、曲がりくねった松梁架構の世界が広がる。
二階天井の上には、曲がりくねった松梁架構の世界が広がる。

小屋組の松梁は8mから9m近くある長い材が多用されている。


小屋組の松梁は縦横に重ねて組み上げられている。
小屋組の松梁は縦横に重ねて組み上げられている。

入母屋屋根の破風板を受ける梁先端には抜けを防ぐためのアリの仕口がつくられている。
入母屋屋根の破風板を受ける梁先端には抜けを防ぐためのアリの仕口がつくられている。
欅の大黒柱の最上部は、他の柱よりも多くの梁が重ね組まれている。
欅の大黒柱の最上部は、他の柱よりも多くの梁が重ね組まれている。
入母屋屋根の隅木部は蓑甲づくりのため、より複雑な木組みになっている。
入母屋屋根の隅木部は蓑甲づくりのため、より複雑な木組みになっている。
解体され地上に置かれた松梁の先端部。欠き込みは垂木を受けるためのもの。
解体され地上に置かれた松梁の先端部。欠き込みは垂木を受けるためのもの。
長い松梁を順番に並べていく。
長い松梁を順番に並べていく。
土台(杉の赤身)に作られた追っかけ大栓継ぎ。驚くほどの高い精度でつくられいてる。
土台(杉の赤身)に作られた追っかけ大栓継ぎ。驚くほどの高い精度でつくられいてる。
小屋組みの松梁の次は、外周の桁梁から解していく。複雑な順番で組まれていたため手間取った。
小屋組みの松梁の次は、外周の桁梁から解していく。複雑な順番で組まれていたため手間取った。

小屋組が取り外された軸組みを下から見上げると、差し鴨居で構成された構造の、凛とした佇まいがより美しく感じられる。


大黒柱の差し口
大黒柱の差し口

この家では23本もの通し柱(1階と2階を貫く長い柱)が使われている。
この家では23本もの通し柱(1階と2階を貫く長い柱)が使われている。
南面の縁側の上には、15m近くもある長い軒丸太桁が見える。当時どうやってここに運び入れたのだろうか?
南面の縁側の上には、15m近くもある長い軒丸太桁が見える。当時どうやってここに運び入れたのだろうか?

柱や梁を1本1本外すこともできますが、可能な限り面で外していくほうが安全で効率よく作業ができます。クレーン車のおかげです。

 

地上に降ろされた長い軒丸太桁。長すぎて画面に入りきらない。
地上に降ろされた長い軒丸太桁。長すぎて画面に入りきらない。
いよいよコアとなる大黒柱周りの構造の解体を残すのみとなった。
いよいよコアとなる大黒柱周りの構造の解体を残すのみとなった。
最後に残った構造の核・大黒柱と差し鴨居
最後に残った構造の核・大黒柱と差し鴨居

夕日に照らされて凛として立つ大黒柱と恵比寿柱(小黒柱とか向い大黒ともいう)を、横に倒して解体は終了。実際の現場にいると感動的な瞬間なのです。お疲れさまでした。大黒柱さんたちも。

ドローン撮影/ガレージ クニマサ・国政馨

音楽/composed by 成川マサノリ 「いにしえの記憶」 REBORN(CD)   

 



◆作業工程の動画
Wood Culture Societyの活動に共感し大工として参加しているDylan Iwakuniさんが、作業しながら記録してくれた、構造の骨組みになるまでの動画です。
 



 

◆玄関の土台の角に使われていた仕口  「二枚ホゾ車知栓留め」


「図解 木造建築伝統技法辞典」に、この仕口が掲載されていたので紹介します。私が建築を学ぶ契機となった「棟梁に学ぶ家」グループの代表である深谷先生と、鈴木紘子さんが共同で執筆された本です。


図解/木造建築伝統技法事典

深谷 基弘 ,鈴木 紘子 (著)  (彰国社刊)

ひとつひとつの技法にフォーカスして、基準のスミと細部のしくみにまで分け入り、基本要素、附帯要素、差口の三部構成で、それぞれの仕口を系統だてて、網羅的に分類整理している画期的な書です。