先人の知恵 -伝統構法- に耳を澄まし、木と木を組む
木造の建築物は古今東西を問わず、木を組み合わせる技術で構築されています。
ただ伝統的な木組みと近代的な木組みには違いがあります。いくつかある中で一番大きな違いは、金物(ボルトなど)の有無です。要するに昔は金物がなかったので金物に頼らなくても大丈夫な木組みの技術が発達したのです。現代は様々な金物が開発され、それに伴って木組み技術も近代化されました。
そしてその違いを具体的、簡単にいうと、木を十字に組むか、T字に組むかの違いということができます。下図に十字に組む伝統的な木組み(仕口)の例をあげました。またその下にT字に組む現代工法の図をおきました。
T字形は地震などの動きに対して、テコの原理が働いて接合部が壊れやすいのです。その強度を補うためにボルトが必要というわけです。
伝統木造建築の構造は、大きく区分して小屋組と軸組で構成されます。
例えば図の白川郷合掌民家では、小屋組の構造は縄や蔓によって結束され、軸組の構造は継手・仕口によって接合されています。
これら千余りの結束・継手・仕口と構造の核、大黒柱+牛梁+向大黒柱がつくり出す全体の構造は復元力特性に富み、その構造原理は単なる部分の力の足し算ではなく、「総持ち」という言葉で表現されています。
構造透視図と結束・仕口位置図 (共著「合掌民家はいかに生まれるか」より )